長崎街道(ながさきかいどう)は、江戸時代に整備された脇街道の一つで、小倉北区にある常盤橋(ときわばし)を始点として 長崎県長崎市に至る路線です。全長57里(約223km)の道程で、途中には25の宿場が置かれました。北九州市内には小倉宿、黒崎宿(北九州市八幡西区黒崎)と 木屋瀬(こやのせ)宿(北九州市八幡西区)の3つの宿場町があり、街道をたどってゆけば所々に当時の面影を感じることができます。
豊前国小倉(北九州市小倉北区)から肥前国長崎(現在の長崎市)に到る長い街道のスタート地点は、 間近にリバーウォーク北九州を望む常盤橋を始点とします。往年の姿を模して作られた木調の美しい橋で、享保14年には徳川吉宗公に献上される「象」が この橋を渡ったという話も残っています。 そんな常盤橋で待ち合わせをした2人のサイクリストに同行して、北九州市内の長崎街道を一緒に走ってみることにしました。
路地裏の静かな道のりをポタリング気分でしばらく走るとレンガ造りの九州鉄道茶屋町橋梁があります。 これは九州ではじめて鉄道を開通させた九州鉄道が明治時代に作った大蔵線の遺構で、将来的に複線化する場合、凹凸部分に煉瓦を継ぎ足すことによって強度を確保できる「下駄っ歯」と呼ばれる側壁の凹凸が特徴です。 マンションや住宅が建ち並ぶ住宅地のなかに、存在感たっぷりに構えている様は迫力満点です。
その後も、住宅地をぬうように走りながら、ときおり県道296号、国道3号へと合流しつつ黒崎方面へ走ります。 道中には到津の森公園、北九州市美術館、高炉台公園などの見どころスポットもあります。桃園球場前を通り過ぎて黒崎へ着いたら、 春日神社へ寄り道してみましょう。春日神社は黒田官兵衛・黒田長政ならびに黒田二十四騎を祀る神社として注目を集めている神社です。 黒田二十四騎画像(市指定文化財)、刷り物黒田二十四騎画像も所蔵されており、歴史マニアにはぜひ立ち寄って欲しい場所です。
黒崎はかつて長崎街道「黒崎宿」のあった町です。 長崎街道の上にできた熊手銀天街前には、かつて流れていた中川をしのぶ暗渠がみられます。 商店街への入り口には「黒崎宿」の文字がはいった門もあり、旅の道中でしばしの休息をとった 旅人達の姿を思い浮かべることができます。
黒崎にはその他にも「曲里の松並木」とよばれる長崎街道の名所があります。 涼やかな松の並木道はかつて次の宿場町である木屋瀬宿まで続いていたそうで、 現在の長崎街道ではここしか残っていません。自転車を降りて、少しの間だけ昔の旅人気分を味わいました。
黒崎からは一路南へ向かいます。ここからは車どおりの多い県道200号と県道211号を経て、 いよいよ木屋瀬宿へ入ります。木屋瀬は遠賀川畔の水陸交通の要所であり、長崎街道の2番目の宿場として栄えた街。 いまも古い町並みが保存されていて、旧家をお洒落に改装したカフェやギャラリーも点在しています。
木屋瀬には長崎街道の歴史を学べる「みちの郷土史料館」もありますので、 ポタリングの最後に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。一日かけて走った長崎街道をふりかえりながら、 歴史に思いを馳せるには最適な場所です。